2016年9月20日火曜日

ネパール27日目

午前8時、ホテルを発つ。標高がかなり高くなってきたからだろうか、身体が思うように動かず、すぐに息がきれる。今日のトレッキングは短い上にいくらかなだらかな傾斜となっているが、昨日一昨日よりもキツい。しばらく登ると、空気の薄さにも身体が順応し、周辺の風景にも大きな変化が。一切の木々が姿を消し、膝下くらいの茂みとたくさんの花々による草原に大きな岩が行き場を失ったようにぽつんぽつんと点在し、小川が道の脇を流れる。なんだか絵の中のような風景で、美しさのあまり現実味がない。また道に捨てられたゴミもほとんどなくなり10分に1つくらいの頻度となった。休憩スペースの周辺のゴミもかなり少ない。途中立ち寄った休憩所で壮年の日本人3人組と出会った。約1ヶ月ぶりの日本語での会話だ。アジア周遊中の夫婦と、同じくアジア旅行中の女性で、ブータンで出会い、ネパールで再開し、一緒にABCトレッキングをすることになったらしい。トビタテのことやここに至るまでの経緯などを話し別れた。様々な出会いというのもトレッキングの醍醐味だ。
お昼過ぎにABCに到着。標高は4130m。高山病の心配はなさそうだが、とにかく寒い。気温は2度。しかし空気は今までの人生で最も澄んでおり、鼻は凍てついて悲鳴をあげるが、何度も深呼吸してしまう。シャワーもヒーターもないので、とにかく服を着込む。疲れたので、とりあえず皆お昼寝。雲がベースキャンプを覆ってしまい、一寸先は雲。今日は景色を楽しむのは無理そうだ。しばらくして、どうやらベースキャンプにたくさんの羊が浸入したらしい。羊の声で目が覚めた。夕食まではまだ時間があるので、フレッドに英語の発音のレッスンをつけてもらう。そのあとは四人でお互いの身の上話をたくさんした。フレッドはおじいちゃんがデンマーク王室のボディガードのトップだとか、カールは一人の女性に12年も片思いしているとか皆個性いっぱいだ。デンマークでは学校の卒業パーティーが3週間も続くらしい。教育システムも各国で大きく異なり、デンマークとスウェーデンは9年間のスクールの後、3年間のミドルスクールをえて、4年間の大学というシステムらしい。イタリアは小学校が5年、中学校が3年、高校が5年、大学が3年と日本人としてはかなり不思議に感じる教育システムだ。夕食のあとはリカードに呼ばれ、二人で大きな岩の上で話す。彼は日本が大好きで、日本のゲーム、マンガ、アニメ、伝統文化など僕よりも詳しいくらいだ。彼は日本で職について生活を営みたいと言った。そして外国人用の日本語教室は充実しているかどうか、外国人の就職状況などを真剣な面持ちで聞いてくる。彼の想いは本気みたいだ。僕も個人的にイタリアの文化、芸術、職人などに興味があり、お互いに質問攻めだ。数年後僕がベネチアへ。そしてリカードが京都を訪れるという約束、必ずまた会うことを誓った。
そして岩を降り、メインルームに戻る。メインルームでは、英語、スペイン語、韓国語、中国語、ネパール語など様々な言語が飛び交い、多国籍というより、もはや無国籍だ。見知らぬ髭もじゃのブロンドの大男とトランプで勝負したり、またメンバーで色々な話をしたり。気付けば19時を過ぎていた。明日は4時起きのため皆早々に床につく準備を始め、僕はブログを書き始めた。ふと外に出てみると月がでていた。ほとんど満月に近い。ネパールにきてはじめて月を見ることができた。月は日本にいるときと寸分違わぬ表情でぽつんと空から僕を見つめる。同じ月を見ているはずなのになぜこんなにも美しく感じるのだろうか。月を見つめるとなんだか胸をぎゅっと掴まれたみたいな自分でもよくわからない切なさに包まれる。

もうトビタテ生としてのネパールでの生活も終わりが近い。最高の仲間との時間を大切に、今を精一杯に生きよう。

それでは、また明日。

2 件のコメント:

  1. 松本君
    きれいな景色☆
    実際に直接目で見た山やお月様は、もっときれいだっただろうね。
    活動をしながら、いろいろ話したり、考えたり…と
    いろいろ実りの多いトレッキングだったね。

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  2. 松本君
    ほんとに貴重な体験をしてるね。
    日本に帰ってきてしばらくしたら
    きっと、自分でも自分が随分変わったことに気付くでしょう。
    月は太陽の光で輝いている。
    松本君が輝けるのもたくさんの人のおかげです。

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