2016年8月31日水曜日

ネパール8日目

今日は朝から濃霧と雨。いつも見えるヒマラヤの高峰どころか、10メートル先も見えない。日本の秋とは違う肌寒さの空気が漂っていた。けっきょく悪天候のため午前の調査は中止。時間が空いたので、いつものように椅子に腰掛け本を読むことにした。本は二冊持ってきていたが一冊は先日すでに読みきっており、もう一冊の方もけっきょく今朝読みきってしまった。今まで数多の書物を読み漁ってきた僕だが、今日読んだものが間違いなく一番だと感じる素晴らしい物語だった。なぜ僕は本を読むのか。もちろん娯楽なのだが、本というものは深い思考への通行証のようなもので、書物を読み終えた後は、余韻に浸りながら、普段たどり着けない自己の奥深くを泳ぐことができる。それが一番の魅力だと思う。
そうして端からみるとボーッとしているように見えるだろう姿で、思考を張り巡らしているうちに、昼食の時間に。
毎日タイ米を食べては、パサついた食感に嫌気がさし日本の米が恋しくなっていた僕だが、とうとうタイ米にも慣れる日がきたらしい。タイ米が美味しく感じると同時に日本の米ってどんな食感だったっけ、と心の中で呟いた。やはり慣れはこわいなと思う。
昼食後はジルとソリティアで遊んだ。僕が強いのか、ジルが弱いのかは定かでないが、何回やっても勝ってしまい、その度にジルの苦笑いがぎこちなさを増していくのが申し訳なかった。だがたかがゲームだろうと勝負であることに違いはない。手を抜くのは一番誠実さに欠ける行為だし、そんなことはしなかった。
ソリティアの後は新しい楽しみを探そうと持ち物を色々と確認してみた。そして電子辞書の素晴らしさに気付いた。今までは辞書としてのみ使っていたのだが、他にもたくさんのことができ、クラシックを聴くことや、季語図鑑でたくさんの美しい言葉に触れること、宮沢賢治を筆頭とする日本の名作家たちの小説を読み漁ることなど、これに気付いたときはなんだか隠された宝物を見つけたときのようで嬉しかった。その後電子辞書に釘付けになっていると、相変わらずひどい霧だったが雨が上がったので調査に出かけることになった。しかし、霧で視界が悪く、雨のせいで動物たちは隠れてしまっており、ほとんど成果はあげられず、ただひたすらに靴を這い上がってくる大量の山蛭と戦うことになった。調査から帰ってくると拠点はとても賑やかになっていた。アンナプルナのトレッキングに行っていた四人が帰宅しており、新メンバーのラファエルが到着していたからである。そのため夕食はとても楽しく、英語はあまり聞き取れないが、皆につられて僕もたくさん笑うことができた。また、くしゃみをする度に皆に「Bless you」と声をかけられるので、なんだろうと調べてみると、どうやら中世ヨーロッパではくしゃみをすると魂が抜けて悪魔が入り込むと考えられていたらしく、それの名残としてこのような文化が生まれたようだった。「Thank you 」と返すのが通例らしく、またひとつカルチャーショックを体験することできた。
今日はけっきょく一日中ぼつぼつと雨が降ったりやんだりで、霧の濃い日だったので、シャワーは冷水。こればっかりは慣れることができないなと痛感した。

今日は自己対話からたくさんのものを得られ、最高の物語にも出会うことができ、英語での会話・食事・活動にも慣れが強く感じられるようになった手応えの大きい一日だった。

それでは、また明日。

1 件のコメント:

  1. お天気に意地悪されてますね・・・
    せっかくの留学なので、その場所でしかできないことをしてほしいですが
    同じ本でも読む環境によって感じ方が違うかもしれないね。
    それも、ありなのかな。
    明日は晴れて、みんなでプロジェクトに取り組める
    楽しい1日になることを願っています!

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